【LTspice入門】④Transient(トランジエント解析)のやり方
無料の電子回路シミュレータ「LTspice」の便利な使い方や、LTspiceを使った電子回路の解説等を連載します。
本記事の内容
- LTspiceのTransient(トランジエント解析)のやり方
LTspiceでは以下の解析を行うことができます。
- Transient(トランジェント解析)
- AC Analysis(AC小信号解析)
- DC sweep(DCスイープ解析)
- Noise(ノイズ解析)
- DC Transfer(DC小信号伝達関数解析)
- DC op pnt(DC動作点解析)
今回は最もよく使うTransient(トランジエント解析)について解説します。
【LTspice入門】記事リンク
Transient(トランジエント解析)とは
Transient(トランジエント解析)は、電圧や電流、電力の時間応答を解析するのに使います。オシロスコープで電圧を測定するイメージに近いです。Transient(トランジエント解析)を行った例を図1に示します。図1はAC電圧を入力した際の、in(入力)とout(出力)を表示させています。
Transient(トランジエント解析)のやり方
最初に図2の回路図を描きます。各定数は以下に示します。
- V1(電源):DC10V
- R1(抵抗):1kΩ
- R2(抵抗):1kΩ
次にTransient(トランジエント解析)を実行させます。通常、この状態で「Run(シミュレーション開始)」をクリックするとTarnsient解析が開始されます。もしTransient解析以外の解析モードになっている場合は、素子や配線がないところで右クリックし、「Edit Simulation CMD.」⇒「Transient」でTransient解析に戻すことができます。
図4の画面が表示されたら、「Stop time:」(シミュレーションの継続時間)に数値を入力し、「OK」を押します。
「OK」をクリックすると波形を表示する画面が立ち上がり、回路図上に「.tran 10m」の文字が加わります(図5)。最初は何も表示されないので、回路図上で測定したいところにカーソルを合わせてクリックして波形を表示させます。このとき、回路図上にカーソルを持っていくとカーソルの形が変化します。カーソルが電圧プローブの形のときは電圧波形を、電流プローブの形のときは電流波形を表示させることができます。
電圧波形を表示させた結果を図6に示します。ここで、あらかじめ測定する箇所に「ラベル」で名前を付けておくと、グラフ画面の波形に名前が反映されます。名前がないと「V(n001)」のように表示されるため、どのグラフがどの測定箇所のものかわかりづらくなります。
10VのDC電圧が、抵抗R1とR2で分圧されて5Vになることが確認できました。
AC電圧源の作り方
上記ではDC電圧源を使って説明しましたが、AC電圧源に変更することもできます。まず、回路図画面の電源(V1)にカーソルをあてて右クリックします。すると図7(左)が表示されますので、「Advanced」をクリック。図7(右)が表示されたら、「SINE...」にチェックを入れて、sin波のパラメータを入力します。基本的に「DC offset(オフセット)」と「Amplitude(振幅)」と「Freq(周波数)」を設定すれば大丈夫です。最後に「OK」をクリックします。
「OK」を押すと図8が表示されます。回路図上では先ほど電圧源のそばについていた「10」(DC10Vを表す)が「SINE(0 4 100)」(オフセット0V、振幅±4V、周波数100Hzを表す)に変わっています。さらに波形表示画面も、設定したsin波が表示されていることが確認できます。
この他にも、パルス波や三角波等、いろいろな波形を作ることができます。ぜひ試してみてください。
さらに詳しく学びたい方へ
LTspiceは利用者が多いため様々な書籍が出ています。私の記事でも今後さらに解説していく予定ですが、もっとしっかり学びたいという方は以下の書籍をおすすめします。私も1冊持っていますが、こういった書籍が1冊手元にあると、たまに操作を忘れたときなどにすぐ確認できて便利です。
最後に
今回はLTspice入門第4回としてTransient(トランジエント解析)について解説しました。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
【LTspice入門】③回路図の描き方
無料の電子回路シミュレータ「LTspice」の便利な使い方や、LTspiceを使った電子回路の解説等を連載します。
本記事の内容
- LTspiceの回路図の描き方を解説
LTspiceでシミュレーションを行うには、最初に回路図を描く必要があります。今回は図1の回路図を例として、部品の配置の仕方、配線の描き方、ラベルのつけ方について解説します。
【LTspice入門】記事リンク
部品の配置方法
最初によく使う記号を図2に示します。
まず「Resister(抵抗)」をクリックします。するとカーソルが抵抗の形になりますので、そのまま配置したいところに持っていってクリックします。同様に「GND」も配置します(図3)。
次に電源を配置します。電源を配置するには、まず「Component(その他の部品)」をクリックします。すると「Select Component Symbol」の画面が立ち上がりますので、「Voltage」を選択し、「OK」をクリックします(図4)。
「OK」をクリックすると、先ほどと同様にカーソルが電源の形になりますので、そのまま配置したいところでクリックします(図5)。
値設定
次に配置した部品の値を設定する方法を説明します。部品は「シンボル(形)」「部品名」「値」で表示されています(図6)。
値は、「値」の上で右クリックするか、「シンボル(形)」の上で右クリックすることで設定できます。まず抵抗の値設定の画面を図7に示します。左図が「シンボル(形)」上で右クリックした場合、右図が「値」上で右クリックした場合です。どちらの場合も図の赤枠内に設定したい値を入力し「OK」をクリックします。今回は「1k」(1000Ω)と入力しました。
次に電圧源の値設定の画面を図8に示します。先ほどと同様に左図が「シンボル(形)」上で右クリックした場合、右図が「値」上で右クリックした場合です。どちらの場合も図の赤枠内に設定したい値を入力し「OK」をクリックします。今回は「10」(DC10V)と入力しました。
配線方法
次に配線の方法について説明します。「Wire(配線)」をクリックすると、カーソルが配線モードに切り替わります。その状態で、配線したいところをクリックすると線を引き始めることができます。図9はGNDから配線を始めた状態です。
ここでテクニックとして、部品上を通過するように線を引くと、その部品の両サイドの端子に自動で接続してくれます。図10は、図9のようにGNDから線を引いて、電源を通過させた状態でクリックした結果です。電源の-端子と+端子に線が接続されているのが確認できます。
そのまま線を引いて、配線を完了させます(図11)。
ラベルの貼り付け
次にラベルの貼り付け方法について説明します。ラベルの貼り付けは必須ではありませんが、後でシミュレーションをする際に役立つので、やっておくことをおすすめします。
まず「Lavel Net(ラベル)」をクリックします。すると図12の画面が立ち上がりますので、ラベル名を記入し、「Port Type」を設定したのち、「OK」をクリックします。今回はラベル名「in」、Port Type「input」と、ラベル名「out」、Port Type「output」の2つのラベルを作成しました。
「OK」をクリックすると、部品配置と同じようにカーソルがラベルに切り替わりますので、配置したいところでクリックし、ラベルと回路図を「Wire(配線)」で繋ぎます(図13)。
これで回路図が完成となります。今回は「電源」「GND」「抵抗」のみで回路図を作成しましたが、その他にも様々な部品がありますので、ぜひいろいろ試してみてください。
さらに詳しく学びたい方へ
LTspiceは利用者が多いため様々な書籍が出ています。私の記事でも今後さらに解説していく予定ですが、もっとしっかり学びたいという方は以下の書籍をおすすめします。私も1冊持っていますが、こういった書籍が1冊手元にあると、たまに操作を忘れたときなどにすぐ確認できて便利です。
最後に
今回はLTspice入門第3回として回路図の描き方について解説しました。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
【LTspice入門】②最初にやっておくべき設定・おすすめの設定
無料の電子回路シミュレータ「LTspice」の便利な使い方や、LTspiceを使った電子回路の解説等を連載します。
本記事の内容
LTspiceの最初にやっておくべき設定・おすすめの設定
1. 最初にやっておくべき設定
1-1. 10の-6乗を表す「μ」を「u」で代用できるようにする
1-2. グリッドの表示
2. おすすめの設定
2-1. 色の変更
はじめに
前回はLTspiceの入手方法について解説しました。
electrical-engineer.hatenablog.com
今回はLTspiceを使う前に、最初にやっておくべき設定、およびおすすめの設定について紹介します。
最初にやっておくべき設定
10の-6乗を表す「μ」を「u」で代用できるようにする
LTspiceでは、「k」で10の3乗、「m」で10の-3乗というように、ローマ字を組み合わせることで数字をコンパクトに表示することができます(例:10000⇒10k)。しかし、10の-6乗を表す場合、デフォルトでは「μ(マイクロ)」となっており、ローマ字ではなく日本語で「マイクロ」と打って変換する必要があります。さらに、パソコンによっては「μ」と打つと文字化けする場合もあり、使い勝手がよくありません。
上記の問題を解決するために、「μ」の代わりに「u」を使えるようにする方法を紹介します。
LTspiceを立ち上げて、ツールバーの「Tools」⇒「Control Panel」をクリックします。
下図が現れますので、「Netlist Options」をクリックします。
次に「Style/Convention」の中の「Convert 'μ' to 'u'[*]」にチェックを入れて「OK」を押して完了です。
グリッドの表示
「New Schematic」をクリックすると、下図(左)の画面が表示されます。
上図(右)のように抵抗や電源等を配置してシミュレーションを行うのですが、このままだと素子の配置や配線が少しやりにくく感じます。そこで、グリッドを表示させる方法を紹介します。
ツールバーの「View」⇒「Show Grid」にチェックを入れます。
すると画面が以下のように切り替わります。
グリッドを表示させることで、素子の配置や配線がやりやすくなります。
おすすめの設定
色の変更
上記の設定が完了したのちにシミュレーションを行うと、以下の図のようになります(シミュレーションのやり方は次回の記事で説明します)。
このままでも問題ないのですが、少し見やすいようにするために色の設定について紹介します。
ツールバーの「Tools」⇒「Color Preferences」をクリックします。
すると下図左の画面が立ち上がります。最初に「Scematic」の色を調整します。「Selected Item」をプルダウンして「Background」に変更します(画面上の背景をクリックしても切り替わります)。次に「Selected Item Color Mix」で白色に調整して「Apply」をクリックします。
次に「Waveform」の色の調整です。「Waveform」をクリックすると下図に切り替わります。先ほどと同様に「Selected Item」をプルダウンして「Background」に変更したのち、「Selected Item Color Mix」で白色に調整します。次に、「Selected Item」をプルダウンして「Axis」に変更したのち、今度は黒色に調整し「OK」をクリックします。
上記の作業が完了すると、下図の画面になります。
このままだとグラフ上に補助線が表示されていないので、補助線を表示させる作業を行います。グラフ上で右クリック⇒「View」⇒「Grid」にチェックを入れます。すると画面が下図のようになります。
色の調整は必須作業ではありませんが、個人的には調整した方がデフォルトよりも見やすくなる気がします。今回紹介した場所以外にも配線の色やグラフの線の色などをお好みの色に変更できますので、自分の好きな設定にしてみてください。
さらに詳しく学びたい方へ
LTspiceは利用者が多いため様々な書籍が出ています。私の記事でも今後さらに解説していく予定ですが、もっとしっかり学びたいという方は以下の書籍をおすすめします。私も1冊持っていますが、こういった書籍が1冊手元にあると、たまに操作を忘れたときなどにすぐ確認できて便利です。
最後に
本日は「LTspice入門」第2回として最初にやっておくべき設定、およびおすすめの設定について紹介しました。次回はLTspiceの使い方について解説したいと思います。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
【LTspice入門】①無料の電子回路シミュレータ「LTspice」の入手方法を解説
無料の電子回路シミュレータ「LTspice」の便利な使い方や、LTspiceを使った電子回路の解説等を連載します。
本記事の内容
- 無料の電気回路シミュレータ「LTspice」の入手方法について解説
LTspiceとは
LTspiceとは、電子回路のアナログ動作をシミュレーションするソフトです。リニアテクノロジー社の略称であるLTと、SPICE(Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis)を組み合わせた名前になっています。
LTspiceは数あるSPICE系シミュレータの中でも、完全無料で制限なく使えるため非常に人気のあるソフトです。私も大学のときだけではなく、社会人になった今でもこのLTspiceを使っています。
LTspiceの入手方法
それではさっそくLTspiceの入手方法について解説していきます。
1. LTspiceのダウンロードページに移動
まずは「LTspice」と検索してANALOG DEVICES社のLTspiceのページに行きます。次のリンク先からも行けます。
https://www.analog.com/jp/design-center/design-tools-and-calculators/ltspice-simulator.html
2. LTspiceをダウンロード
次にLTspiceをダウンロードします。
LTspiceのダウンロードページに行ったら、図の赤枠内をクリックします。私のPCはWindows10なので、ここからはWindows10をベースに説明します。
ブラウザにChromeを使っている場合、ダウンロードが完了すると左下に「LTspiceXVII.exe」と表示されます。
3. LTspiceをインストール
LTspiceのダウンロードが完了したら、次はインストールを行います。上図の赤枠内をクリックします。
インストーラが立ち上がりますので、「Accept」をクリックします。
「Accept」をクリックするとインストーラの下部が表示されますので、 「Executable Version(s)」をご自分のPCに合わせて、「Install Now」をクリックします。「Installation Directory」はそのままでかまいません。
「Install Now」をクリックすると、インストールが始まりますのでしばらく待ちます。
インストールが成功すると、上図が現れますので「OK」をクリックします。
「OK」をクリックすると上図が現れますので、しばらく待ちます。
上図が表示されたらインストール終了です。お疲れさまでした。
さらに詳しく学びたい方へ
LTspiceは利用者が多いため様々な書籍が出ています。私の記事でも今後さらに解説していく予定ですが、もっとしっかり学びたいという方は以下の書籍をおすすめします。私も1冊持っていますが、こういった書籍が1冊手元にあると、たまに操作を忘れたときなどにすぐ確認できて便利です。
最後に
本日は無料の電子回路シミュレータ「LTspice」の入手方法を紹介しました。次回は「最初にやっておくべき設定・おすすめの設定」についてお話します。
electrical-engineer.hatenablog.com
ここまでお読みいただきありがとうございました。
【就活・転職】電機メーカの電気技術者の職種・仕事内容(後半)
電機メーカの電気技術者の職種・仕事内容を知りたい人
「電機メーカに就職したいけど仕事内容がいまいちよくわからない、職種って何があるの?」といった疑問に答えます。
本日の記事の内容
- 電機メーカの電気技術者として採用された際の職種・仕事内容(後半)
※この記事は私が働いている電機メーカでの経験をもとに書いておりますので、あくまで一例としてお考えください。
電機メーカの電気技術者として採用された際の職種・仕事内容(後半)
電機メーカの電気技術者として採用された際の職種は以下になります。
- 設計開発
- 品質保証
- 量産技術
- 研究開発
- 知的財産
- 調達
前回は設計開発・品質保証・量産技術の3つを紹介しました。
今回は残りの研究開発・知的財産・調達について紹介します。
研究開発
研究開発は将来の製品開発に役立つ、あるいは新しい製品となりそうな技術の研究を行います。
研究開発と設計開発の違いは、何年先を目指して開発するかです。
設計開発は2~5年後に発売される製品を開発するのに対し、研究開発は10年先の製品を目指した研究を行います。
この研究開発という職種は産学連携といって、大学と連携して研究を進めることも多々あるので、大学の研究室に所属したことのある人には馴染み深いかもしれません。
私も研究室に所属していたときは、あるメーカに精密部品や資金を提供してもらいながら研究をしていました。
大学の研究室での研究と似ていることもあり、設計開発と並んで人気の職種の1つです。
大学の研究室と違うのは、企業での研究は利益が求められるということです。
利益が期待できない、すなわち製品にならなそうな研究テーマや成果が期待できない研究テーマは切られてしまうというシビアな面もあります。
知的財産
知的財産は特許を担当する職種になります。
特許は法律系の職種と思われる方もいるかもしれませんが、特許の内容は技術的な専門知識が欠かせないため、技術系からも募集が行われます。
具体的な仕事内容は、設計開発部門が考案したアイデアの特許化のサポート、自社の製品が他社の特許に違反してないかのチェック、他社の製品が自社の特許を侵害していないかのチェック等です。
この中で、他社の特許が自社の特許を侵害していないかのチェックは非常に重要です。
もし他社が自社の特許を使って製品を売って利益を上げている場合、それは自社の利益が横取りされていると言っても過言ではありません。
その場合は、裁判を起こし、製品販売の差し止めや賠償金の請求等を行います。
特許を一度見たことがある方はご存知かと思いますが、特許は非常に独特な文章で構成されており、さらに文章量も多いです。
私も年に数本特許を読むのですが、知識不足もあいまって理解するのに非常に時間がかかっています。
ましては特許を書く場合に至ってはなおさらです。
知的財産部門は技術系の専門知識に加えて、特許を理解するための読解力や、特許を書くための文章力が求められます。
調達
調達は部品の調達を担当する職種になります。
例えば電気部品を例にとると、抵抗やコンデンサなどどの製品にも使うような部品はまとめて大量に発注することで単価を下げることができます。
その他部品メーカとの価格交渉を行うのもこの職種です。
調達は部品をいかに安く安定的に入手できるかが大切になります。
最近では電気自動車の流れもあり、「電子部品のひっ迫」と呼ばれる現象が起きています。
「電子部品のひっ迫」とは、電子部品を欲する企業が多くなり、電子部品が欲しくても手に入りにくくなることです。
そうなると、自社に部品を供給してもらえるよう交渉したり、他の電子部品メーカを開拓したりといった業務も発生します。
最後に
本日は電機メーカの電気技術者の職種・仕事内容(後半)ということで、研究開発・知的財産・調達について解説しました。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
【就活・転職】電機メーカの電気技術者の職種・仕事内容(前半)
電機メーカの電気技術者の職種・仕事内容を知りたい人
「電機メーカに就職したいけど仕事内容がいまいちよくわからない、職種って何があるの?」といった疑問に答えます。
本日の記事の内容
- 電機メーカの電気技術者として採用された際の職種・仕事内容(前半)
※この記事は私が働いている電機メーカでの経験をもとに書いておりますので、あくまで一例としてお考えください。
電機メーカの電気技術者として採用された際の職種・仕事内容(前半)
電機メーカの電気技術者として採用された際の職種は以下になります。
- 設計開発
- 品質保証
- 量産技術
- 研究開発
- 知的財産
- 調達
今回はこのうち設計開発・品質保証・量産技術の3つを紹介します。
設計開発
設計開発は、文字通り製品を実際に設計・開発する職種になります。
メーカに就職したい理由でよくある「自分で製品を作りたい!」という人はこの職種です。
具体的な仕事内容は、電気回路の設計、部品選定、他部門との交渉(機械や情報系の設計開発、品質管理や量産技術部門との連携等)、特許技術の考案等になります。
電気回路の設計は、回路図を描いて、回路パターンをCADで引いていきます。
部品選定は、どの部品を使うかの選定になります。
たとえば抵抗1つに対しても、リード部品にするか表面実装部品にするか、定格電力はどのくらい必要か などを考えて部品を選定する必要があります。
回路設計、部品選定が終わると、今度はそれを試作して実際に動くのか評価をしていきます。
他部門との交渉は、例えばよくあるのが機械系の設計開発者から「回路基板と外壁が干渉してしまう(ぶつかる)ので回路基板をもう少し小さくできませんか」という話がきて、基板を小さくできるようパターンや部品配置を工夫するということがあります。
特許技術の考案では、設計開発の中で生まれた新しいアイデアを積極的に特許化していきます。
特許は他社に対して大きなアドバンテージと同時に、他社に特許を出された際には大きな障壁となります。
したがって、この特許技術の考案も設計開発の大切な役目の1つとなります。
私の担当もこの設計開発ですので、こちらの内容については後日また詳細に述べたいと思います。
品質保証
品質保証(または品質管理)は開発した製品を世に送り出していいかチェックする職種になります。
具体的な仕事内容は、製品の品質試験で、例えば電気系の品質試験ですと、
- 雷サージ試験(雷が落ちた際に製品が破壊しないか)
- ESD試験(静電気で製品が誤作動・破壊しないか)
- 昇温試験(電気部品が定格温度以上に発熱しないか)
などがあります。
品質試験は、試験がNGになった場合は再現性を確認する必要があります。
再現性というのは、どういう条件でどういう試験をするとNGの状態が起きるかというものになります。
これが非常にやっかいで、100回同じ試験をして1回しかおきないNGなんていうことも少なくありません。
また、基本的に設計開発部門は原価低減のため、試験クリアギリギリの性能で攻めてきます。
そのため開発の段階(開発初期か後期か)によっては試験がNGになることはよくあります。
しかし、NG具合によっては設計開発部門がいろいろな理由を考えて試験をOKにしようとします。
品質保証部門はそれに押し負けず、その理由に正当性があるのかをきちんと判断することが大切です。
品質保証がおざなりになると、例えば某メーカのスマートフォンの爆発や、自動車の不正検査等、ブランドイメージに大きな傷をつける可能性があります。
したがって、品質保証はブランドイメージを守るためにも非常に重要な部門です。
量産技術
量産技術(または生産技術)は製品を量産するための方法や設備を整える職種です。
具体的な仕事内容は、量産方法の確立、工場でのラインの立ち上げ等になります。
例えば電気系の量産技術だと、製品に乗せる電気回路の量産があります。
量産方法の確立というのは、どこで製品を作るか、現状の設備で量産可能か、どの機械を導入すると効率UPにつながるか、といったことを判断し工場に指示を出します。
工場設備を動かすことになるので、時には数千万円単位の案件の判断を求められることもあります。
また、製品の組み立ては人手作業から機械による自動組み立てにほぼ移行されてきていますが、組み立て機械にも莫大なお金がかかるため、いかに安く効率よく自動化するかといったことも考える必要があります。
工場のラインの立ち上げというのは、新製品を作るための工程を準備することです。
基本的にこの新製品を作るための工程の準備というのはなにかと問題がおきます。
したがって、ラインの立ち上げの際には量産技術者も現地に赴いて立ち合います。
生産工場は海外拠点にも多々あるので、量産技術者は海外出張が多いです。
私の同期にも量産技術の方がいるのですが、日本にいるよりも海外にいる方が長いようです。
余談ですが、海外出張に行くといろいろな金銭補助が貰えます。
海外出張や赴任に抵抗のない方にはお勧めの職種です。
ただし、生産工場は東南アジア等の物価の安い国に多いので、アメリカやヨーロッパのような海外をイメージされてる方は考え直したほうがいいかもいしれません。
最後に
本日は電機メーカの電気技術者の職種・仕事内容(前半)ということで、設計開発・品質保証・量産技術について解説しました。
残りの職種についてはまた後日記事を書きたいと思います。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
【自己紹介】
はじめに
はじめまして。井上と申します。
これから私自身の勉強も兼ねて、電気系の技術に関連した記事を中心に書いていく予定です。
よろしくお願いします。
経歴
最初に私の簡単な経歴について紹介します。
2014.3 大学(電気電子工学系)を卒業
2016.3 大学院(電気電子工学系)を卒業
2016.4 大手電機メーカに入社。製品の電気設計部門に配属。
2019.5 入社4年目
上記の通り、大学では電気電子工学を専攻していました。
そしてそのまま大学院に進学し、電機メーカに就職しました。
現在(2019.5)は入社して4年目になります。
仕事
仕事内容は電気設計になります。
詳細は別記事で紹介したいと思いますが、簡単に言うと、電化製品(カメラやプリンタ等)に入っている回路基板の設計を担当しています。
幸いにもある程度知名度のあるメーカで働かせてもらっているので、就活時の経験や仕事内容等も記事にできればと考えています。
最後に
始めてブログを書くのでお見苦しい点が多々あると思いますが、指摘・アドバイス等頂けると助かります。
それでは皆様、今後ともよろしくお願いします。